マネックスグループの松本大社長は、米国で仮想通貨事業への参入を検討していることを明らかにしました。
目次
マネックスグループが仮想通貨事業に参入
2018年7月、「マネックス証券株式会社」を傘下に置く「マネックスグループ株式会社」が、アメリカに置いている完全子会社の「トレードステーショングループ」を通じて仮想通貨事業に参入する方針を明らかにしたことが話題となりました。
マネックスグループは2018年4月に国内の仮想通貨取引所であるコインチェックを買収したことで仮想通貨取引ユーザーの間では広く知られており、今回のアメリカでの仮想通貨事業参入は新たな展開として再び注目を集めています。
マネックスグループとは
マネックスグループの概要を引用します。
マネックスグループは主力事業として大手ネット証券会社であるマネックス証券を運営しています。マネックスグループの特徴は後述のとおり国内外問わず証券会社等の買収を積極的に行っていたことで、これらの海外子会社での事業展開を通じて国内外で実績を積み重ねてきています。
引用:マネックス証券HP
マネックスグループによるコインチェック買収
マネックスグループといえば、2018年1月に仮想通貨NEMの大量流出事件を起こしたコインチェックを買収した企業として有名です。コインチェックは流出事件が発生して以降、営業を停止し被害者への補償をしていました。
さらに金融庁からの業務改善命令も受けており経営の立て直しを図っていましたが、事件の被害額は580億円以上という莫大な金額になり、顧客の信頼を取り戻すのも大変な状況でした。このような状況の中2018年4月、マネックスグループがコインチェックを買収することになるのですが、なぜマネックスグループはコインチェックを買収したのでしょうか。
その理由は、多くの顧客を持つコインチェックを買収することで、顧客ごとマネックスグループに取り込もうとしたからだと考えられます。
マネックスグループが買収した段階ではコインチェックは金融庁に正式に認められているわけではない「みなし仮想通貨交換業者」でした。
コインチェックとしては顧客からの信頼を取り戻し、かつ金融業者への登録申請をスムーズに行いたいという考えがあり、一方でマネックスは仮想通貨事業に進出するにあたり、コインチェックの抱える多くの顧客に着目した。このように両社の思惑が一致したために、マネックスグループによるコインチェックの買収が成立したと見ることができるのです。
トレードステーショングループについて
トレードステーショングループは、1982年にアメリカのフロリダ州で設立された、オンライン仲介取引や先物取引を手掛ける会社です。アメリカ本国では誰もが知るような有名な企業というわけではないものの、投資専門誌からは高い評価を得ているなど、投資の世界においては特に個人投資家の間では有名なオンライン証券会社であるといえます。
マネックスグループは2011年6月にトレードステーショングループをおよそ340億円で買収しています。この頃のマネックスグループは2010年10月には国内のオリックス証券、12月に香港のBOOM証券、2011年11月にはアメリカでFX事業を展開しているIBFXホールディングスを買収するなど、国内外問わず積極的に企業買収を行い事業規模の拡大を図ってきました。
これらの買収が行われた時点で将来の仮想通貨事業への参入までを見越していたかについては定かではありませんが、結果としてアメリカに本拠地を置く子会社を手中に収めていたことが、今回のアメリカでの仮想通貨事業参入を後押ししたといえるでしょう。
アメリカにおける仮想通貨の取扱とトレードステーションの動き
マネックスグループが仮想通貨事業に進出するにあたり、日本の次に目をつけたのが子会社のトレードステーショングループが拠点を置いているアメリカでした。
アメリカでは2017年12月11日に、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のCBOE先物取引所(CEF)にてビットコインの先物取引が開始されたのですが、これは仮想通貨取引をしている人たちには待ちに待った出来事であり、実際にビットコインの取引が開始されると、右肩上がりに価格が上昇しました。一時は26%以上の値上がりを記録し、二回サーキットブレーカー(一定以上の価格変動があった際に強制的に数分間取引を停止する措置)が発動するほどの人気ぶりでした。他にも、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でも先物取引が開始されるなど、アメリカでビットコインの取引が続々と開始されていることで、仮想通貨市場のさらなる拡大が期待される状況ということができます。
これらの動きを受けて、マネックスグループ傘下のトレードステーショングループも自社の先物取引顧客がCEFやCMEで提供するBTC先物取引を利用できるようにするなど、仮想通貨事業に力を入れ始めています。
今後の流れ
次は、マネックスグループの今後の展開を追ってみましょう。
コインチェックのアメリカ進出
マネックスグループの将来的な目的は、傘下のコインチェックをアメリカにも進出させることだと考えられます。
マネックスグループは現在、コインチェックの仮想通貨交換業者の登録申請手続きを日本国内で進めている状況ですが、同時進行でコインチェックのコンプライアンス体制の再整備やセキュリティ向上を進めているとされています。日本国内での登録申請が完了し正式に仮想通貨交換業者となった暁には、新たにアメリカに取引所を開設するのではなく、コインチェックのサービスを英語化するなど既存のノウハウを活用する方針であると予想されています。
アメリカでの仮想通貨に対するルールづくり
アメリカでは今後、仮想通貨に対する法整備などのルールづくりが進んでいきます。そして日本での仮想通貨に対するルールづくりはこのアメリカでのやり方を参考にして進められると考えられています。マネックスグループがトレードステーショングループを通じてアメリカで仮想通貨事業への参入を進めているのも、アメリカでの仮想通貨事業の展開を通じてノウハウを蓄積し、それを日本における仮想通貨事業の展開に生かしたいという思惑があるのではないかと見ることができます。
ポイントは、コインチェックの仮想通貨交換業者登録申請の通過時期
いずれにしろ、マネックスグループがアメリカおよび日本で仮想通貨事業に本格的に参入するためには、まずは傘下のコインチェックが日本での仮想通貨交換業者としての登録申請を無事に済ませることが大前提となります。マネックスグループの松本CEOは2018年7月27日の記者会見において、8月中には登録申請を通過させたい旨の意欲を表明していましたが、2018年10月8日時点ではコインチェックが登録申請を無事終えたというニュースは未だ報じられていないのが現状です。
日本の金融庁及び仮想通貨業界団体は現在進行形で仮想通貨事業に対する規制強化を検討していることが、コインチェックの登録申請にも影響を及ぼしているという見方をすることができるのですが、一方で大規模な仮想通貨流出事件を起こしたコインチェックであるために先述のコンプライアンス体制の整備やセキュリティ強化に予想よりも時間がかかっているという見方もできます。
先述のとおり、仮想通貨に対する規制はアメリカが先行して取り組んでいくことが予想されるなか、日本での登録申請をいかに早く済ませられるかが、マネックスグループのアメリカ本格進出のキーポイントとなるといえるでしょう。