ファクトムは「Factom.Ink」という会社が管理・運営する仮想通貨です。ここでは、2015年9月1日に公開されたファクトムの特徴や今後の将来性についてまとめてみます。
ファクトムの概要
ファクトム(Factom)は電子データを管理・記録する分散型プラットフォームで、ビットコインのブロックチェーンを使っているところが、ほかの仮想通貨にはなかなか見られない特徴でしょう。
これについては、ファクトム・ジャパンチームのアドバイザーの一人として参画した大石哲之氏が自身のブログで「(ファクトムは)ビットコインのブロックチェーンを使い、分散型のデータ・セキュリティレイヤー(API)を提供するというプロトコルだと考えて欲しい」と書いていることも参考にしてみると良いかもしれません。
何やら難しそうな表現が出てきましたが、分散型プラットフォームを取り入れた仮想通貨は、いわゆる「ビットコイン2.0」といわれ、一般的に通貨以外の機能を備えています。ファクトムの場合は電子データを公正に管理・記録する機能を持ちます(日本でこれに近い仕事といえば、公証役場や監査法人などが担っています)。
そして「分散型のデータ・セキュリティレイヤー(API)を提供する」とは、ファクトムが管理・記録したデータをビットコインのブロックチェーンを使って保存しているということです。
なお、ファクトムの通貨単位は「FCT」で、Factoid(ファクトイド)とentry credit(エントリ・クレジット)という2種類のトークンが使われています。
ファクトムの仕様
- ハッシュアルゴリズム
ビットコインに依存。
ファクトムはビットコインのブロックチェーン上にアプリケーションを構築しており、ビットコインのプロトコルに依存しています。 - ブロック制作間隔
ビットコインに依存。 - 発行総数
Factoid(ファクトムのトークン)は当初114,285,714枚発行する予定ですが、ファクトムは発行上限をとくに定めていません(現在およそ900万枚が発行されています)。 - 取引承認方法
ビットコインに依存。
ファクトムの特徴
ファクトムは通貨以外の機能を付加したビットコイン2.0タイプの仮想通貨です。
なかでもファクトムは、あらゆる電子データをブロックチェーン上に管理・記録できる分散型プラットフォームを持っています。ここでいう電子データとは、証券や登記情報、契約書などが該当します。
ファクトムのこうしたサービスを、ブロックチェーンの世界ではProof of Existenceと呼んでいます。
Proof of Existenceを直訳すると「存在の証明」や「公証」です。Proof of Existenceは書類を暗号化することで短い文字列に要約出来ます。ファクトムはこれを自身のディレクトリで暗号化し、最終的にビットコイン(またはイーサリアム)のブロックチェーンに書き込みます。
この過程をファクトムでは「M2」といいます。
「M2」を具体的に示すと以下の4つの段階に分かれます。
1.「EntryBlock(エントリブロック)」に書類や指紋情報などが書き込まれます。
2.「Directory Block(ディレクトリブロック)」ではカテゴリーごとに文書を整理します。
3.暗号化した文書情報をファクトムのブロックチェーンに一旦書き込みます。
4.ファクトムのブロックチェーンのスナップショットをビットコインのブロックチェーンに暗号化し格納します。
最後に「Dloc」と「ファクトムハーモニー」について簡単に触れておきましょう。
「Dloc(ディーロック)」は、ファクトムとSMARTRAC社が共同開発しているプロジェクトで、医療履歴や個人情報などを「Dlocステッカー」に取り込むものです。ファクトムは将来的に医療情報の管理・記録に「Dlocステッカー」を使おうとしており、業界では非常に注目されています。
「ファクトムハーモニー」は住宅ローンのパッケージ化のことです。
住宅ローン市場では不動産会社や銀行などの第三者が介入し成り立っていますが、「ファクトムハーモニー」ではこうした第三者が介入することなく、住宅ローンを実現するプロジェクトになります。
ファクトムの使い道
ファクトムにはFactoidというトークン(通貨)がありますが、その使い道を紹介できるほどメジャーな通貨ではありません。
それでは、Factoidというトークンが何に使われているかといえば、いちばんにはファクトムの証明情報記録サービスの利用料があげられます。
●なぜFactoidをentry creditに交換するのか
Factoidがファクトムの証明情報記録サービスの利用料に使えることが分かりましたが、直接Factoidを利用料の支払に使うわけではありません。ファクトムにはentry creditというもうひとつのトークンがあります。つまりFactoidをentry creditに交換して支払いに当てます。
なぜそんな面倒なことをするかというと、Factoidをentry creditに交換することでハッキングを防止するのです。
Factoidはビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨と交換できますが、entry creditというトークンはほかの仮想通貨と交換出来ません。entry creditはファクトムの証明情報記録サービスの利用料支払に限定されていますので、ハッキングのインセンティブを奪うのに役立ちます。この目的で、わざわざFactoidをentry creditに交換します。
●ファクトムは投機目的の利用には向かない
また、entry creditというトークンはほかの仮想通貨と交換出来ないことは、マネーゲームによってFCTの乱高下を落ち着かせることにも役立ちます。以上の二点によって、entry creditというトークンは使われています。
仮想通貨というと日本では投機目的に使われることが多いのですが、ファクトムは投機目的での売買には向かないことが分かります。
ファクトムの価格
2017年の1月は300円前後だったファクトムですが、12月31日は6800円まで値を上げ、2018年の1月ピーク時には7600円まで価格が上昇しています。
仮想通貨元年と言われた2017年は、ほぼ全ての主要通貨に見られた現象ですが、ファクトムの価格も結局20倍以上も上昇したことになります。
7月から8月にかけてファクトムの価格に動きが見られるのは、実業家の与沢翼氏による買いが影響してのことかもしれません。もしそうだとすると、ひとりの実業家が選んだ行動が相場に影響を与えたことになります。仮想通貨の相場が、どれほどセンシティブに反応するかが分かるでしょう。
2018年3月現在の順位からいっても(Cryptocurrency Market Capitalizationsで65位)、ファクトムの価格はまだ確実に伸びると思われます。
ただ、それは2017年のような値動きになるかは分かりません。とくにファクトムのプラットフォームは日本では理解しづらいサービスです。ファクトムに興味があって今後投資する方は、ほかの仮想通貨との違いを十分理解することが大切です。
ファクトムの買い方
- Poloniex
- Bitrrex
- Coincheck(コインチェック)*現在取引停止中
ファクトムが買える日本国内の取引所は、現在のところCoincheck(コインチェック)のみです。CoincheckはNEMの不正流出で金融庁から業務改善命令を受け、現在一部の機能等を停止しています。現在ファクトムを入手できる取引所というと、海外ではPoloniexとBitrrexになります。
残念ながら、日本語にも対応しているBinanceやKucoinもファクトムは扱っていません。またBitrrexも新規取引の申込みをセーブしている関係で(2018年3月現在)、ファクトムが買えるのは実質的にPoloniexだけです。
Poloniexは有名な取引所ですが、ビギナー向きではありません。初めて仮想通貨を買う方は、もう少しメジャーな通貨(ビットコインやイーサリアムなど)に投資する方向性を検討されてはいかがでしょうか(すでに仮想通貨投資を始めている方であれば、その限りではありません)。
ファクトムの将来性
ファクトムがすすめる電子データの管理業務は世界的な需要があることから、ファクトムの将来性は十分期待できるでしょう。とくにNEMやリップルを推す方は、ファクトムの示す方向性は理解できる方が多いはずです。
その一方で、ファクトムやリップルは会社によって仮想通貨を運営しており、その姿勢に中央集権的との批判が集まることは否定できません。またファクトムはリップルと似て、分散型プラットフォームに対して通貨としての魅力に欠けるきらいがあります。ファクトムに懸念材料があるとすればその点だけです。
いずれにしても、ファクトムの実力が現実に試されるには、まだ時間がかかります。ファクトムは中長期的な視点で見守っていきたい仮想通貨といえそうです。