ハードフォークとは?事例を交えてわかりやすく解説

ハードフォークとは?事例を交えてわかりやすく解説

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仮想通貨の運用は、「ブロックチェーン」という取引データ管理システムをベースに行われています。仮想通貨の取引データは「トランザクション」といい、ブロックチェーンではトランザクションが一定時間ごとに「ブロック」と呼ばれる1つのまとまりとして保存され、次のブロックへと「チェーン」で接続されます。

ブロックチェーンとハードフォーク

おおまかにに説明すると、ハードフォークとはこのブロックチェーンが2つに分岐し、それぞれが「古いルールで引き続き運用される仮想通貨」と「新しいルールで運用が開始される仮想通貨」となることを意味します。

ブロックチェーンが2つに分岐

なぜブロックチェーンを分岐させるハードフォークが行われるのかというと、基本的には「仮想通貨(ブロックチェーン)に発生している大きな課題を解決するため」です。

現実の紙幣や硬貨、例えば日本円で考えてみても、これまでに何度も変更が行われ「新紙幣(新硬貨)」が生まれてきています。「ニセ札」が作られてしまう事態に対処するために、最新の偽造防止技術が施された紙幣が作られることもあれば、数百年前には硬貨を作るための金属が足りなくなってきたために新しい種類の硬貨が作られた、なんていうこともありました。このように、紙幣や硬貨といった「通貨」は常に同じものが使われ続けるのではなく、紙幣や硬貨そのものが問題をもっていたり、あるいは社会状況が大幅に変化したりすることで、それらに応じて必要な変更が行われるのです。

偽造防止技術が施された紙幣

仮想通貨もこれは同様であり、運用していく中で様々な課題が見つかっていきます。あえて新しい仮想通貨を作らずともブロックチェーン全体に新しいルールを適用することだけで課題を解決する(ソフトフォークといいます)こともありますが、それでは対処しきれない大きな課題を解決するための手段として、新しい通貨の発行が行われることもある。これが「ハードフォーク」のこれが主なハードフォークの仕組みです

スケーラビリティ問題とハードフォーク

仮想通貨で発生する問題というのは様々なものがありますが、ハードフォークは仮想通貨以外にも、ブロックチェーンの管理運営を行っているマイナーやユーザーなどのコミュニティ内で大規模な分裂騒動が発生して、意図しない形でハードフォークが行われるなどという場合もあります。実際にいくつかの仮想通貨でハードフォークが行われる要因にもなったものとして「スケーラビリティ問題」が挙げられます。

取引データ情報の管理作業キャパシティ

スケーラビリティ(scalability)問題とは、ブロックチェーン技術におけるブロックでの取引データ情報の管理作業キャパシティが、ブロックのスケールをオーバーしてしまうことをいいます。

一つのブロックで行えるデータ処理には限界がある一方で、仮想通貨ユーザーは増加していき処理しなければならない取引データの量も増えていくために、管理者業キャパシティがオーバーしてしまい、取引の遅延や不具合を生じさせてしまうのです。このスケーラビリティ問題を解決するためには、ブロックで行えるデータ処理のキャパシティを増やしたり、ブロックへの取引データの書き込み方法を変更(圧縮)することで一つのブロックで扱える取引データ量を増やしたりなどの方法が考えられます。

いずれにしろ、ブロックそのものの仕様を大幅に変更する必要があるために、既存の仮想通貨の変更ではなく、新しい仕様のブロックチェーンを使用する新しい仮想通貨を作ることになるわけです。

メリットとデメリット

ハードフォークを、良い面と悪い面の両側から解説します。

ハードフォークのメリット

ハードフォークは仮想通貨の課題解決を目的として行われます。ハードフォークのメリットとしては、ユーザーにとってはハードフォーク前までに発生していた取引のタイムラグなどの問題が解決されて使い勝手がよくなるという点にあります。

他にも仮想通貨がより使い勝手のよいものにバージョンアップされるということで、仮想通貨の人気が高まり、価値が上がることもあります。ハードフォーク前の仮想通貨を所有していたユーザーに対しては、ハードフォーク後の新しい仮想通貨が付与される場合もあるので、ユーザーにとっても嬉しい話となり得ます。

仮想通貨の人気が高まり、価値が上がる

中央銀行などが新たに紙幣や硬貨を発行する場合には、それらがきちんと全国民に行き渡るように十分な数を準備するために、新しい紙幣や硬貨が古いもの以上に価値が上がることはないので、これは仮想通貨のハードフォークならではの特徴といえます。

ハードフォークのデメリット

一方で、仮想通貨のハードフォークにはデメリットも存在します。先ほど「仮想通貨がより使い勝手のよいものにバージョンアップされるということで、その仮想通貨の人気が高まり価値が上がることもあります」と記載しました。しかし、仮想通貨のバージョンアップがユーザーの期待ほどの効果を上げられなかった場合には、仮想通貨としての価値が価値が下がることもあります。

また、ハードフォークが実際に行われるタイミングでユーザーが仮想通貨の取引を行うと、仮想通貨取引に不具合が発生したり、所有していたはずの仮想通貨が消失したりしてしまう可能性もあります。もちろんこういった事態を避けるためにハードフォーク直前から仮想通貨取引が停止されるのが通常ですが、ハードフォーク実施直後にも同様の不具合が発生する可能性はあるとされているので、ハードフォーク前後の取引には細心の注意を払うべきでしょう。

実際にハードフォークが行われた事例

実際に行われたハードフォークとして有名なものは「ビットコイン」が分岐していったという事例です。2017年8月のハードフォークで「ビットコインキャッシュ」が誕生しました。

ビットコインキャッシュ

この時、世間ではビットコインの「分裂騒動」というニュアンスでの報道が多かったですが、実際にはビットコインの抱える「送金遅延の問題」を解決するためにハードフォークが行われたというのが事の真相でした。

この時新たに誕生した「ビットコインキャッシュ」は新規発行枚数が多く、価格も1BCHあたり約4万円となったために、誕生直後に時価総額第3位となるほどに安定かつ人気の新仮想通貨となり、現在に至っています。また旧来のビットコインの方はハードフォーク直後こそ値を下げたものの、ハードフォークによる影響がないとユーザーが認識したために、その後すぐに値を戻しています。

ビットコインキャッシュの誕生ほど有名ではありませんが、2017年11月には再びビットコインでハードフォークが行われています。このハードフォークは「中国のマイニング集団による独占を防ぐこと」を目的として行われ、「ビットコインゴールド」という新しい仮想通貨が誕生しているのですが、ビットコインゴールドは皮肉なことに2018年5月に「51%攻撃(悪意のある51%のマイナーに仮想通貨を支配されること)」を受けてしまい、20億円相当が不正出金されてしまったといわれています。

ハードフォークがユーザーに与える影響

以上、ここまで仮想通貨でハードフォークが行われる理由やメリット・デメリット、そして実際の事例について説明してきました。

現在、仮想通貨の種類は1,000を超えるとされていますが、どのような仮想通貨であろうと今後ハードフォークが行われる可能性はあると言えます。ハードフォークはビットコインの事例のように、長期的に通貨の価格に影響を与えるとは限りません。

ただし、一時的に価格が急落する危険性はあるため、自分が所有しているコインのハードフォークの予定は事前に把握しておくとよいでしょう。

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