ビットコインに次ぎ第2位の時価総額を誇るイーサリアム。スマートコントラストという、独自の技術を用いたイーサリアムの特徴や今後の将来性についてまとめてみます。
イーサリアムの概要
イーサリアム(Ethereum)の名前は仮想通貨として知れ渡っていますが、じつは仮想通貨自体の名称ではなく「イーサリアムプロジェクト」というアプリケーションを作成するプラットフォーム、そして関連プロジェクトの総称の事です。ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が考案し(当時19歳)、2015年7月30日に公開されました。
そのプロジェクトで使われる仮想通貨がイーサ(ETH)ですが、今では通貨自体もイーサリアムと呼ばれています。
イーサリアムは、独自通貨と、さまざまな機能を持った分散型プラットフォームを兼ねて存在しています。
考案者のヴィタリック・ブテリン氏も「あらゆる目的のために使えるブロックチェーンのプラットフォームをつくる目的でイーサリアムを立ち上げた」と語っています。そのため、イーサリアムはアプリケーションの数が仮想通貨のなかでは最も多くあります。
イーサリアムは公開後、4段階のアップデートを行う事があらかじめ決められていました。現在は3つ目の「メトロポリス」というアップデートを行っている最中です(2018年2月時点)。イーサリアムは日々進化を遂げています。
イーサリアムの仕様
イーサリアムの基本仕様を下記にまとめています。参考にご覧ください。
- ハッシュアルゴリズム
イーサリアムは独自のアルゴリズム「Ethash」を使用しており、「Ethash」にはASIC耐性が備わっています。ASIC耐性とは、演算時にASICを使っても意味のないルールを持つアルゴリズムで、これが備わる「Ethash」はASIC以前のマイニング機器(GPUなど)を使ってマイニングができます。 - ブロック制作間隔
イーサリアムのブロック生成時間は平均17秒です。これはビットコインに比べると格段に早くなりますが、同時に採掘難易度が下がり、フォークが発生しやすくなります。
そこでイーサリアムは、ビットコインでは通常破棄される短いチェーンを創出したマイナーにもマイニング報酬を付与し、短いチェーンをメインのチェーンに記録しています。 - 発行総数
現在発行済のEtherは9770万ETHです。
イーサリアム以外の仮想通貨は発行量が決まっているものがほとんどですが、イーサリアムに関しては発行上限が決められていません。 - 取引承認方法(コンセンサス・アルゴリズム)
イーサリアムの取引承認方法には、ビットコインと同じくProof of Works (プルーフ・オブ・ワーク)が使われてきましたが、公開以来Proof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク)、通称“Casper”に移行するといわれてきました。
なおProof of StakeのStakeとはトークンの総量のことで、PoSはコンピューターの性能やエネルギーを必要としない取引承認方法です。2018年1月1日、3年を超える開発期間を経て、ようやくCasperのα版がリリースされました。順調に進めば2018年中には移行は完了するでしょう(厳密にはPoWとPoSのハイブリッド型に移行する模様)。
イーサリアムの特徴
イーサリアムの一番の特徴は「スマートコントラクト」です。
スマートコントラクトとは直訳すると「賢い契約」です。要は人の手を介さないで契約を自動で行う仕組みのことです。契約を自動的に実行して記録してくれます。
契約の執行条件と契約内容を予め決めておくことでその条件が満たされた際に自動的に契約が実行される仕組みです。
契約がプログラムによって機械的にその認証を実行するため、相手からの虚偽申請などのリスクが小さくなります。また、ブロックチェーンにより、契約の実行履歴が全て記録されるため、透明性も高くなります。
ERC20トークンもイーサリアムのスマートコントラクトのひとつです。2017年後半はイーサリアムの躍進が目立ちましたが、その躍進を支えた要因のひとつにイーサリアムとICOの関係があります。なぜイーサリアムを利用したICOが多かったか。それはERC20トークンを利用することで、幾つかの点でICOを実行がかなり簡便化されるからです。
たとえば、指定したアドレスにEtherを送ると自動的にICOのトークンが送られてきます。ERC20トークンにはその他のツールも利用でき、ERC20は技術力が不足するプロジェクトから非常に重宝されました。イーサリアムのERC20トークンが、多くのICOの活動を活性化したといっても言い過ぎではありません。
分散型プラットフォームを持っていることも特徴の一つで、分散型アプリの「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」でも、スマートコントラクトのアイデアが使われています。
「CryptoKitties」は暗号で動く子猫をキャラクターにした育成ゲームで、このゲームアプリは2017年の年末から2018年の1月にかけてイーサリアムネットワークで大ヒットし、イーサリアムの価格高騰の火付け役になりました。「CryptoKitties」のなかには、1000万円以上の高値がついた仮想猫もでてきました。
そんな仮想猫たちをゲーム上で飼い主らが交配・育成して楽しむのですが、猫たちには特定の遺伝情報が備わっており、猫同士の交配では親猫の遺伝子を受け継いだ子猫が生まれます。
イーサリアムには企業向けのアプリケーションもありますが、個人が利用するスマートコントラクトに、イーサリアムならではの細かいアイデアが生かされています。
仮想通貨とゲームアプリは好相性といえますが、ヒットアイテムを生み出したイーサリアムのセンスには頭が上がりません。
なおイーサリアムのスマートコントラクトの実装に使われているプログラム言語はEthereum Foundationが開発した「Solidity(ソリディティ)」という言語です。これもイーサリアムの特徴のひとつとして押さえておきましょう。
イーサリアムの使い道
仮想通貨として時価総額が第2位のイーサリアムは、ビットコインに次いで注目されているコインです。このため独自通貨のEtherで店舗決済が可能になればと考えている人は多いはずですが、イーサリアムは国内の店舗で使えるのでしょうか。
●BITPointが発表したイーサリアムの店舗決済サービスは宙に浮いたまま?
2017年6月、仮想通貨取引所のBITPointがイーサリアムの店舗決済サービスを8月に開始するとのニュースが伝わってきました。しかし、この話は宙に浮いたままというのが実情です。
店舗決済サービスをスタートさせる前にイーサリアムは大事なハードフォーク(アップデート)を控えていました。店舗決済サービスをスタートさせる前段階で、計画を延期する要件が発生したのかもしれません。
●イーサリアムは決済通貨としての質に不安を抱えていた?
またこうしたハードフォーク以前の問題として、イーサリアムを決済通貨として使うのにはやや早すぎるとの声も囁かれていました。というのも、イーサリアムもビットコイン同様ユーザー数が増えたことで、送金時間が少しずつ長くなってきてたのです。そのため、決済通貨としてのクオリティに不安があったとも考えられます。
もちろん、これは今後のハートフォーク(アップデート)で改善されるものです。
イーサリアムとしてはBITPointの提案について、すべてはハードフォークが完全に終わってからと考えていたのかもしれません。
もちろん3番目のハートフォードク(アップデート)が終われば、イーサリアムは本格的にEtherの決済機能を強化し、店舗決済サービスを広げてくることは確実です。その頃には紹介できるショップやサービスがかなり増えていることでしょう。
イーサリアムの価格
2ボラタリティが大きいとされる仮想通貨ですが、2017年の後半、イーサリアムの価格はそのなかでも比較的安定してます。しかも昨年末12月29日にリップルとの順位変動がおきましたが、年始にはもとの2位に返り咲き、相変わらずの堅調ぶりを見せつけました。
かならず息を吹き返すと思っていたものの、ビットコインの下げ相場は昨年の12月から大きく続いていましたから、下手するとイーサリアムとの逆転劇も現実化するかもと想像していました。
ところがようやく下げ相場から脱出し、ビットコインの価格も上昇しました。しばらくは上げ相場が継続しそうです。
イーサリアムについては大きな不安要素もないため、3つ目のハードフォーク「メトロポリス」が無事終了しハードフォークの効果が浸透してくれば、価格のほうは更に上ると考えられます。
唯一不安な点があるとすれば、イーサリアムのプラットフォームを使ったICOが多いことです。米国や中国以外の国でも、仮想通貨のICOを規制する動きが活発化していますが、2017年後半から続くイーサリアムの好調要因には少なからずICOのプロジェクトが関係しています。
国よる規制ならそれほど影響はないと考えられますが、投資家の心理にICOを拒絶する動きが出だしたら価格に影響するでしょう。イーサリアムを追っている方は、ICO規制に関する動きに注目しておきましょう。
イーサリアムの買い方
- bitFlyer(ビットフライヤー)
- Zaif(ザイフ)
- ビットバンク(bitbank.cc)
- GMOコイン(ジーエムオーコイン)
- DMM Bitcoin(ディーエムエムビットコイン)
イーサリアムはbitFlyerとGMOコインでも買えますが、注意したいのは、bitFlyeはビットコイン以外は販売所形式となり、GMOコイン取り扱っているすべてのコインが販売所形式です。販売所形式だと取引所形式とくらべ価格は高くなりますので、この2つはイーサリアム向きではありません。
取引所形式で売買できるのは、Zaif、ビットバンク、DMM Bitcoinの3つです。とくに3つのなかでおすすめの取引所は、指値注文が使えるZaifかビットバンクです。
DMM Bitcoinは新しい取引所ということもあり、もう少しユーザー評価を集めたいところです。
また番外に香港のBinance(バイナンス取引所)をあげておきます。Binanceはイーサリアムをビットコインはもちろん取扱銘柄が非常に豊富で、今年の1月には世界No.1に輝いた仮想通貨取引所です。
最初のうちはは国内の取引所の方が使いやすいですが、日本語にも対応しておりハードルはさほど高くありません。Binanceはぜひチェックしておきましょう。
イーサリアムの将来性
イーサリアムは国内のブロックチェーンの専門家からの評価も高く、ビットコインを抜く可能性が最も高い仮想通貨です。
「イーサリアムの特徴」でも触れましたが、イーサリアムが作り出すプロダクトは、比較的若い投資家層に受け入れやすいものが多くあります。
また別の側面では、Microsoft、JPMorgan、KDDI、TOYOTA、MUFGグループといった世界的に有名な企業がEEA(Enterprise Ethereum Alliance)に参加を表明しています。従って若い層だけにとどまらず、幅広い年代からも期待が高まっています。
仮想通貨の投資先として見た場合、イーサリアムの将来性は非常に安定していると考えられます。
不安材料は先ほども触れましたが、世界的なブロックチェーンのCIOプロジェクトの規制です。ただイーサリアムはプラス要素が多い仮想通貨ですから、影響による痛手は少ないと考えられます。仮想通貨のトレーダーであれば、イーサリアムはビットコインと並んで、ぜひ押さえておきたいコインです。