少ない自己資金でも証拠金と呼ばれる一定額以上の資金を支払うことで、大きな資金を動かすことのできる取引のことを、「レバレッジ取引」といいます。小さな力から大きな力を生み出す「レバレッジ取引」とは、どういったものなのでしょうか。
目次
「レバレッジ」とは「てこの作用」
レバレッジとは英単語の「leverage」であり、日本語訳にすると「てこの作用」を意味します。装置産業(大規模な装置やシステムを必要とする産業)の借り入れや不動産を担保とした不動産投資、あるいは金融における信用取引などにおいて用いられる取引の種類です。
金融における信用取引の場合、例えば100万円の金融商品を購入し110万円で売却すると、10万円の利益を得ることができます。しかしこの時、金融商品の購入には「100万円」という大きな金額が必要となるために、手元にある資金が少ない場合には取引そのものを行えない、ということになります。そこで登場するのが「レバレッジ取引」です。
レバレッジ取引で扱う資金のことを証拠金と呼びます。証拠金の何倍までの金額を取引できるかが「レバレッジ倍率」で表されており、倍率は取引所によって変わります。
例えば、レバレッジ倍率10倍の取引所であれば、手元に10万円しかない場合でも、その10倍の100万円の取引ができるようになります。
外国為替証拠金取引(FX)におけるレバレッジ取引
レバレッジ取引が一般的になったのは、外国為替証拠金取引(FX)の登場からでしょう。FXとは、各国の通貨(外貨)の価格変動を利用して外貨の売買を行うことで利益を得ることを目指す取引です。
例えば1ドル80円のときに500ドルを40,000円で「購入」しておきます。その後の価格変動で1ドルが120円となったときに、購入しておいた500ドルを日本円に「売却」すると60,000円になり、40,000円の元手により20,000円の利益を得られたことになります。
このFX取引の最大の長所が「レバレッジ取引を行うことができること」です。日本でも1998年の外国為替及び外国貿易法の改正により可能となって以来、2000年代のインターネットの爆発的普及に伴いFX投資家が一気に増えていきました。
しかし2008年に発生したリーマンショックが金融市場に大きなダメージを与え、さらに日本では2011年3月に発生した東日本大震災もリーマンショック後の混乱に拍車をかける形となりました。
これらによりFX投資家を含めて大多数の投資家が損害を被ったばかりか、FX取引を扱う業者についても倒産や再編が相次いだことで、FX投資の盛り上がりはシュリンクしていきました。
その後、現在はアベノミクスへの期待と政策効果によりFX取引をはじめとした金融市場は安定していますが、一般市民の間ではFX投資の話をかつてほど盛んに耳にすることは少なくなってきたといえるのではないでしょうか。
仮想通貨の登場と仮想通貨取引の開始
2009年、リーマンショック後の混乱の最中に仮想通貨「ビットコイン」が誕生、仮想通貨を対象とした取引が行われ始めました。
仮想通貨の取引というと、始まった当初こそ「わずか数万円で購入した仮想通貨が1年後には100倍の価値となり数100万円の利益を稼いだ」などの儲け話があちらこちらで聞かれた一方で「数千万円の退職金が一気にゼロとなってしまった」などといった失敗談も少なくなかったために「仮想通貨取引=ギャンブル」といったイメージが定着してきました。
実際に、仮想通貨が登場した当初は、仮想通貨というものの仕組みが広く正しく理解されていたとはいえず、特に仮想通貨及び仮想通貨を支える技術である「ブロックチェーン」が本来持っている「信頼性」が一般には定着していませんでした。
一方で一攫千金の夢を叶えるべく投機目的の資金流入が積極的に行われたために、信頼性の定着を待たずに急激な勢いで仮想通貨の値上がりが発生。結果的に、信頼性が低いという共通認識の中で仮想通貨は大きな値動きを見せたために、仮想通貨=ギャンブルというイメージがつくのも致し方ないことであったといえます。
2018年現在、ビットコインの誕生から既に9年が経過しており、ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン)も多く登場。仮想通貨取引のシステムなども過去と比較すれば安定的なものとなってきており、また仮想通貨の仕組みに対する正しい理解もかなり広まってきました。現在では、厳密には仕組みなどが異なるものの、大手銀行の中でも仮想通貨を発行しようとする動きが出ているほどです。
仮想通貨取引におけるレバレッジ取引とそのメリット
仮想通貨取引の世界では、外貨を利用したFXと同様に「仮想通貨FX」としてレバレッジ取引が行えるようになっています。
例えば、1BTC(ビットコイン)=80万円のレートであった場合、通常の取引であれば1BTCを売買するのに80万円の資金が必要となります。これを例えばレバレッジ倍率10倍での取引を行うことで、8万円の元手で1BTCの売買をすることができようになるわけです。
レバレッジ取引を行うことの最大のメリットは、「少額の資金で取引を行える」こと。仮想通貨取引も含めた金融商品の売買などでは、トレーダーが高額な資金で取引を行うようなイメージが強く「仮想通貨の取引やってみたいんだけど、あんまりお金を持っていないから」と諦めてしまっている方も多いでしょう。
それがレバレッジ取引を行うことで、数千円の証拠金があればその何倍もの金額での売買を行うことができるようになるのです。
少額の証拠金で大きな金額の取引を行えるということは、すなわち「大きな金額のリターンを狙える」ことを意味します。
例えばレバレッジを利用しない取引では数千円であったリターンが、レバレッジ倍率10倍の取引であれば同じ資金でもリターンが一気に数万円に膨らむということです。外国為替証拠金取引、そして現在の仮想通貨FXに多くの人が興味を持っているのは、ひとえにこの「大きなリターン」を期待してのことでしょう。
仮想通貨取引におけるレバレッジ取引のリスク
大きなリターンを期待できるということは、一方でリスクも大きくなることを意味します。
例えば、10万円の仮想通貨をレバレッジ10倍の100万円分購入した場合、110万円のときに売却すれば、10万円分の利益を得ることができます。レバレッジをかけなかったときに比べて、10倍の利益を生むことができます。一方で価値が90万円にまで落ちてしまうと、マイナス10万円となり、損失も10倍になってしまいます。
もちろん、レバレッジ取引においては証拠金以上の損失を出さないための「ロスカット注文」や「強制決済」などの仕組みも存在しますが、これらも仮想通貨レートの急激な変化には対応しきれない場合があり、もしそうなった場合には証拠金を大幅に超える損失を被ってしまうリスクが存在するのです。これこそがレバレッジ取引の抱える大きなリスクです。
仮想通貨のレバレッジ取引ができる取引所
仮想通貨のレバレッジ取引ができる取引所はいくつかあるので、最後にいくつかご紹介します。
GMOコイン
GMOコインは東証一部上場である「GMOインターネットグループ」の子会社です。2017年1月より仮想通貨の交換および取引事業に参入しており、高いセキュリティ技術により信頼性があるとされ、“初心者でも安心して取引が行える”と高い評価を受けています。
GMOコインでは「ビットコイン」「イーサリアム」「ビットコインキャッシュ」「ライトコイン」「リップル」の5種類の仮想通貨のFX取引が可能となっており、レバレッジ倍率はビットコインで5倍か10倍、その他の4種は5倍とそれぞれ設定されています。
Zaif(ザイフ)
Zaif(ザイフ)は、2015年3月にオープンした、テックビューロ株式会社が運営する仮想通貨の取引所です。テックビューロ株式会社はZaifの運営のほか暗号通貨技術とブロックチェーン技術に基づいたソフトウェアやサービスの開発、コンサルティングサービスを行っています。有名タレントがCMに出演しているために名前だけでもご存知の方も多いかと思います。
Zaifでは「ビットコイン」や「イーサリアム」「ネム」「モナーコイン」「「ビットコインキャッシュ」といったアルトコインのほか、「ZAIF」「CounterParty」といったトークンも取り扱っています。このうちビットコインの取引でのみレバレッジを利用した取引が可能となっており、レバレッジ倍率は1倍、2.5倍、5倍、7.77倍を選択できます。
DMMビットコイン
DMMビットコインは2018年1月に開設された取引所です。その名の通り大手企業である合同会社DMM.comの子会社として信頼性が高いほか、後述のとおりレバレッジ取引が行える仮想通貨の種類も多いため、ユーザーからの人気が高い取引所のひとつといえます。またZaifと同様に某有名モデルがCM出演していることでも有名です。
DMMビットコインでは「ビットコイン」「イーサリアム」「ネム」「リップル」「ライトコイン」「イーサリアムクラシック」「ビットコインキャッシュ」の7種類の仮想通貨でレバレッジ取引が可能となっています。ただし、レバレッジ倍率はすべて5倍で固定されています。
レバレッジ取引ではリターンとリスクを慎重に検討しよう
ここまで、レバレッジ取引の仕組みから仮想通貨FXのメリットとリスクまでをご説明してきました。レバレッジ取引は少額の投資でも得られるリターンが大きい分、リスクも大きくなります。注意点などを慎重に見極めた上で取引を行うようにしましょう。
まだ取引に慣れていない方は小額からはじめてみることもオススメします。